日本の高齢化とビルクリーニング業界の人手不足――誰が「ビルの清掃」を担うのか

日本ではいま、これまでにないスピードで少子高齢化が進んでいます。総人口は減少を続ける一方、高齢者の割合は増え続け、あらゆる産業で「この先、誰が働き手を担うのか」という課題が突きつけられています。なかでも見過ごされがちなのが、オフィスビルやホテル、病院、商業施設などの清掃を担う「ビルクリーニング」業界です。一見地味な仕事に見えますが、その規模と社会的な役割は決して小さくありません。

ビルクリーニングの仕事は一見単純に見えるかもしれませんが、その規模は決して小さくありません。厚生労働省が2020年国勢調査の結果をもとに集計したデータによれば、ビル・建物清掃の職業に従事する労働者は約91万680人にのぼります。

ビルクリーニング分野の雇用統計データ(就業者数910,680人、平均年齢52.1歳、年間賃金297.4万円、月間労働時間158時間、時給1,502円/1,233円)
出典:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/97

オフィスビル、ホテル、病院、ショッピングセンターをはじめとする数多くの施設の裏側では、数十万人もの労働者が建物を清潔で使える状態に保っています。問題は「どれだけの労働者が必要か」だけでなく、日本の労働力人口が高齢化していくなかで「誰がその仕事を担うのか」という点にあります。

日本の高齢化はどこまで進んでいるのか

総務省統計局の最新データによれば、2025年の日本の総人口は約1億2,305万人で、2020年と比べて約310万人、率にして2.5%減少しました。同時に、65歳以上の人口は約3,619万人となり、総人口に占める割合は29.4%に達しています。この割合は、日本でこれまでに記録された中で最も高い水準です。

2026年8月時点の推計でも、65歳以上人口は依然として約3,620万人前後で推移しており、75歳以上に限っても約2,149万人にのぼります。

一方で、日本の労働力人口の中心を担う15〜64歳の生産年齢人口は減少が続いています。この変化が示す課題は明確です。日本は高齢者人口が増えているだけでなく、それを支える労働力の基盤そのものが、年々縮小していっているのです。

出典:stat.go.jp

ビルクリーニング業界に迫る人手不足と世代交代の課題

こうした日本における人口動態の変化は、ビルクリーニング業界で働く人々の年齢構成にも色濃く表れています。厚生労働省の職業情報(job tag)によれば、2025年賃金構造基本統計調査をもとにしたビルクリーニング分野の労働者の平均年齢は約52.1歳です。

厚生労働省はこの業界について、パートタイム労働者の比率が高く、中高年層の労働者が多くを占める分野だと説明しています。つまり、この業界が抱える課題は「今すぐ清掃スタッフが足りない」というだけの話ではありません。その先にある「働き手の世代交代をどう進めるか」こそが、本質的な問題なのです。

現在働いている人材が定年に近づくほど、業界はその代わりとなる新しい人材を必要とします。しかし日本の生産年齢人口が縮小を続けるなかで、国内だけで新たな担い手を確保することは年々難しくなっています。

もっとも、「高齢化が進んでいる=自動的にビルクリーニング業界の人手が足りなくなる」と単純に結びつけるのは早計です。労働市場の状況は、賃金水準や生産性、自動化の進展、労働条件、産業間の人材移動など、さまざまな要因の影響を受けます。とはいえ、人口動態の変化が労働力の確保に追加の圧力をかけていることは間違いありません。

外国人材という選択肢――インドネシアとの連携が生む可能性

こうした日本の人口動態は、ビルクリーニング業界に新たな人材需要を生み出しています。日本政府は2024年4月から2029年3月までの期間、特定技能(Specified Skilled Worker)制度のビルクリーニング分野において、最大37,000人の外国人材受け入れ枠を設定しました。2020年国勢調査に基づく約91万680人という就業者数と、2025年データに基づく約52.1歳という平均年齢を踏まえると、働き手の世代交代を進める必要性はこれまで以上に高まっていると言えます。人口の高齢化と生産年齢人口の減少が同時に進む日本において、外国人材はその労働力需要を満たすための選択肢の一つになっています。

この機会をつなぐ動きは、インドネシアにおける人材育成という形ですでに始まっています。職業教育・訓練に取り組む社会的企業BIRU(PT BISA Ruang Nuswantara)は、特定技能(SSW)制度を通じた就労ルートに向けて人材を育成する「Japan Building Cleaning」プログラムを展開しています。同プログラムでは日本から取り寄せた実機材を使用し、認定を受けた指導員のもと、日本の労働現場の基準に沿ったカリキュラムで研修を行っています。2026年初めまでに60名以上が研修を修了し、そのうち複数名がすでに日本での就労を開始しています。

一方、弊社インドネシア総合研究所も、日本での就労を目指すインドネシア人材への研修・情報提供・準備支援などを通じて、インドネシアと日本をつなぐエコシステムづくりに取り組んでいます。弊社は長年にわたり両国のビジネス関係の強化に注力しており、コンサルティングやリサーチ、採用・ビザに関する支援などのサービスを提供しています。

BIRUのような職業訓練機関と、弊社のような支援エコシステムとの連携は、日本への就労機会が受け入れ側の人材需要だけで完結するものではないことを示しています。渡航前の段階で、インドネシアの人材が適切な技能・資格、そして日本の労働基準への理解を身につけておく必要があるのです。

まとめ:高齢化する日本とインドネシア人材が拓く可能性

日本の高齢化は、単なる人口統計上の問題にとどまりません。ビルクリーニングのような業界では、この変化が新たな人材需要を生み出すと同時に、インドネシアの人材が正規のルートを通じ、十分な訓練を受けたうえで日本の労働市場に参加する機会を広げています。

ビルクリーニング分野における特定技能人材の受け入れや、インドネシアからの人材採用にご関心をお持ちの企業様は、ぜひ弊社までお気軽にご相談ください。採用計画の設計から、ビザ手続き、受け入れ後の定着支援まで、実務に沿った形でサポートいたします。

関連コラム:
https://www.indonesiasoken.com/news/indonesia-talent-international-certification
https://www.indonesiasoken.com/news/biru-mou-integrated-training-center-japan-jobs